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【レポート】関西学院大学社会学研究科大学院GP 共同研究班研究合宿


●日時: 2010年7月30日(金)夕方 ~ 8月01日(日)ひる

●場所: 関西セミナーハウス(京都)


7月の終わりに、2泊3日の日程で大学院GP共同研究班の研究合宿がおこなわれた。社会学研究科大学院GPではこれまで、大学院生・研究員の企画・運営によるふたつの共同研究班「東アジアのストリートの現在」(代表:稲津秀樹、谷村要)、「〈承認〉の社会学的再構築」(代表:吹上裕樹、平田誠一郎)が、学内外から報告者・コメンテーターを迎えた公開研究会を開き、議論を重ねてきた。この「夏合宿」は、それぞれの研究班のメンバーである大学院生・研究員の報告を中心とし、これまでの研究会に参加していただいた学外の若手社会学者の方々にコメンテーターをお願いして構成した。

この「夏合宿」のねらいは、共同研究班メンバーである大学院生・研究員各自に、これまでの研究内容を草稿の段階で報告してもらい、この先「論文」の形に仕上げるまでの指標とモチベーションを得てもらおうというものだった。

各報告は、いずれも質的な記述をともなった事例研究だ。方法は文献・文書資料の言説分析やフィールドワークをおこなったものなどさまざまである。いずれにしろこうした事例研究は、それをどのような理論的な文脈に位置づけて論じるのかが考えどころだ。学外からお招きしたコメンテーターの方々には、この理論的文脈付けに関してのサポーティブなコメントを各報告についてしていただき、そのうえで、草稿ブラッシュアップのための全体的な議論をおこなった。

こうして研究科外の大学院生・若手研究者と対面的な議論を「合宿」形式で集中的におこなうことは、大学院生の研究のモチベーションを刺激し、最終的な成果にしあげるためにはたいへん教育的効果の高いものだと思う。この「合宿」のあとに、報告内容をまとめ、ジャーナルに論文投稿した参加者もいる。そのほかの報告も、この先修士論文や、年度末までに刊行予定の共同研究成果論集(『KG/GP社会学批評』別冊)におさめられる論稿としてまとめられる予定だ。


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※ 研究合宿のプログラムと要旨集(pdfファイル)はこちらからダウンロードしてください。

文責: 白石壮一郎(大学院GP特任助教)

posted on 2010-09-29    

【ギャラリー】地方都市=ジモトの駅前の風景

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地方都市=ジモトの駅前の風景(2010年4月24日撮影、2010年7月掲載)

JR岡山駅の東口の風景は他のターミナル駅前のそれとほとんど変わらないだろう。もちろんすべてが同じなわけでもない。背中を向けた桃太郎像とその愉快な仲間たちは、岡山の地域アイデンティティの象徴として位置づけられている。この写真には映っていないが、駅前の目抜き通りは桃太郎大通りと呼ばれている。他にも桃太郎アリーナや桃太郎スタジアムもある。しかしそのような岡山を象徴する記号を除けば、これがどこの風景なのかということは、生活者や旅行で訪れたことがある人以外には特別な意味を持たないだろう。

この地方都市のターミナル駅はこれまでたくさんの人たちに利用されてきた。数知れない人びとの記憶や経験がこの風景とつながっている。私自身も国内外を旅するときには必ず利用してきたし、高校生の頃には恰好の待ち合わせ場所だった。携帯電話が普及していない20年前の高校生時代。待ち合わせをしたが現れない友人を1時間以上待っていたということもあった。そんな彼も今では家具職人となり、僕の西宮のアパートにある木製テーブルをつくってくれた。というように、ローカルなジモトをめぐる記憶は、次々と様々な思い出を想起させ、過去・現在・未来のイメージを豊饒なものとしてくれる。

しかし、ジモトを代表する桃太郎と僕とはほぼ無関係である。僕のジモトのイメージに対しては何のインスピレーションも与えない。むしろ、ここに桃太郎がいるからこそ、思い出せないことがあるのではとさえ考えてしまう。試しに左手の人差し指で桃太郎を隠してみた。なんか色々と思い出してきたぞ、少なくともそういう気分にはなる。自分で考えてみようという気になるのだ。ジモトについて自分たちの言葉で語ってみること。そうすれば、地方都市の駅前の雲に覆われた空も晴れるのかもしれない。

文:川端浩平 (大学院GP特任助教) 撮影:中村智道

■ストリート・ギャラリー(フィールドから見えるもの)

posted on 2010-07-01    

KG/GP 社会学批評 第3号

KG/GP 社会学批評 第3号    
     
目次
     
     
<書評論文>
     
「いじめの社会理論」の射程と変容するコミュニケーション 向井学 PDF
内藤 朝雄 『いじめの社会理論―その生態学的秩序と生成と解体』 (柏書房、2001年) 400KB
     
集合住宅を起点とした本物の場所づくりは可能か 松村淳 PDF
竹井 隆人 『集合住宅デモクラシー―新たなコミュニティ・ガバナンスのかたち』 (世界思想社、2005年) 492KB
     
「サブカルチャー」の舞台裏にある日常
―「詩のボクシング」ある朗読ボクサーの事例から―
尾添侑太 PDF
伊奈 正人 『サブカルチャーの社会学』 (世界思想社、1995年) 386KB
     
信念、場所、身体―現代社会において人々を儀礼へ向かわせるもの― 福田雄 PDF
Satsuki, Kawano, Ritual Practice in Modern Japan: ordering place, people, and action(University of Hawaii Press, 2005) 373KB
     
<特集:国際発信能力の涵養はいかにして可能なのだろうか? >
     
国際発信能力の涵養はいかにして可能なのだろうか?
(執筆者:川端浩平、松村淳、稲津秀樹、中川千草、谷村要)
  PDF
7,565KB
     
* 記録 *
     
大学院GP 大学院生・研究員による研究活動 (2010年1月~6月)   PDF
536KB
     


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posted on 2010-06-24    

【ギャラリー】地方の裏寂れた商店街にあるゲームセンターのUFOキャッチャーが奏でるメロディー

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地方の裏寂れた商店街にあるゲームセンターのUFOキャッチャーが奏でるメロディー(2010年4月撮影、2010年5月掲載)

総延長1キロ以上にもおよぶ岡山市中心市街地で最大規模の表町商店街では、テナントの高齢化や後継者不足が進み、一日中シャッターを降ろしている店舗も多く見られる。ゲームセンター周辺の商店街は、郊外型シネマコンプレックスがオープンした影響でかつて存在していた映画館が閉鎖されたこともあり、特に元気がない。

夜の9時も過ぎれば、閑散とした商店街にはUFOキャッチャーの電子音が静かに漏れ、その周辺にかすかに広がっていく。そしてゲームセンターには、人びとにはあまり知られていない、しかしおそらくどこの「地方」のゲームセンターに行っても広がっているであろう光景や人びとのつながりが存在している。その光景とささやかなつながりは、UFOキャッチャーから流れてくる電子音で奏でられた「おどるポンポコリン」のように切なく、希薄なものである。

実に様々な人びとにそのゲームセンターで出会うことができる。地元の私立大学に通う大学生。中学校を卒業して以来、学校にも通わないし、働いていないニートの若者たち。UFOキャッチャーで獲った景品でコスプレしている少女たち。ゲーム好きのサラリーマン。そして、野宿生活をするホームレスの若者たち。皆、行き場を失っているという意味では、ホームレスと呼べるのかもしれない。

彼/彼女らは、メールアドレスを交換し、ジュースや煙草、ゲーム料金やコインを融通しあうなかで、その寂しい場所を意味あるものにするためにメンテナンスし、社会とのつながりをギリギリのところで維持している。このように、経営的には必ずしも芳しいとはいえない「地方」の裏寂れた商店街のゲームセンターも、居場所を失った人びとの拠り所となり、自己を確認し、文化を営む場所となっている。

文:川端浩平 (大学院GP特任助教) 撮影:中村智道

■ストリート・ギャラリー(フィールドから見えるもの)

posted on 2010-05-31    

【報告】Asia Pacific Week

投稿者:川端 浩平(大学院GP特任助教)


日時:2010年2月8日(月)~11日(木)

場所:オーストラリア国立大学(豪州キャンベラ)

Asia Pacific Weekは中国研究、日本研究、インドネシア研究、南アジア研究、東南アジア研究、環太平洋地域研究という、計6つのアジア太平洋地域研究の分会、およびそれらを横断する共通企画・公開講義から構成されている。このうちわれわれの参加したのはこのうち日本研究分会(Japanese Studies Graduate Summer School)、そして共通企画・公開講義である。

「summer school」と通称されているとおり、これはあくまで参加者の大学院生が中心となるワークショップである。今回は、各研究分会について日本研究(51人)、環太平洋地域研究(32人)、中国研究(26人)、インドネシア研究(23人)、東南アジア研究(20人)、南アジア研究(19人)、合計171人の大学院生が各地から参加している。日本研究分会での研究報告は36本であった(共同セッションにおける他分会からの発表も一部ふくむ)。参加者らは会場での報告と討論のほかにも、期間中大学の寮に宿泊し日常的な交流をおこなう。そうしたなかで、将来につながるネットワークも広がっていくかもしれない、というしくみである。

すべての研究報告と講義は英語でおこなわれる。質疑応答や討論も基本的に英語が使用されるが、日本語を理解する参加者も多かったため、議論への参加ハードルを調整するために日本語での質疑や討論も、そのつど会場でのスタッフや参加者のアシストによって可能となっていた。


文:川端 浩平(大学院GP特任助教)


写真:研究報告の様子

写真:研究報告の様子


※より詳しい報告は「Asia Pacific Week (豪州・オーストラリア国立大学)に関する報告(参加レポート集)」をご覧ください。

posted on 2010-04-28    

2009年度社会学研究科研究成果発表会開催報告

投稿者:社会学研究科大学院GP事務室

 

毎年恒例の社会学研究科研究・調査成果発表会が2010年2月18日(木)に開かれました。

 今年は、「相互行為・コミュニケーションの諸相」、「文化・社会資源へのまなざし」、「新しい公共性とその他者」、「記憶・表象のポリティクス」と題された4つのセッションにわかれた総勢12名の大学院生が研究発表しました。

各セッションでは社会学研究科および先端社会研究所所属の研究員がコメンテーターをつとめ、議論の「火付け役」をつとめました。各研究発表は提出した修士論文の内容の発表から博士後期の研究調査成果・進捗状況報告まで、テーマも段階もさまざまです。当日の発表者と報告タイトルは、以下をごらんください。

 

当日の発表会のプログラム(pdf ファイル)はこちらからダウンロードしてください。

posted on 2010-02-23    

2009年度「社会学研究科 研究成果発表会」について

投稿者:社会学研究科大学院GP事務室

 

標記発表会を下記のとおり開催いたします。


● 社会学研究科 研究成果発表会

● 日時:2010年2月18日(木)09:30~17:15

● 場所:池内記念館(第二教授研究館) 第1研究会室

 

みなさんのご参加をお待ちしています。

 

本発表会のプログラム(pdf ファイル)はこちらからダウンロードしてください。

posted on 2010-02-16    

KG/GP 社会学批評 第2号

KG/GP 社会学批評 第2号
目次
<書評論文>
データベースへの決断的思考停止に対する処方箋の可能性 山森宙史 PDF
宇野 常寛 『ゼロ年代の想像力』 (早川書房、2008年) 353KB
個人の趣味が変えていく都市の風景
―都市景観の新しい生成原理と変容する建築家像―
松村淳 PDF
森川 嘉一郎 『趣都の誕生―萌える都市アキハバラ』 (幻冬舎、2003年) 429KB
保存する社会 ―「怒りのヒロシマ」を手がかりにして ― 濱田武士 PDF
米山 リサ 『広島―記憶のポリティックス』 (岩波書店、2005年) 361KB
<特集> ストリートガイド
ストリートガイド
(執筆者:飯田豊、岩館豊、稲津秀樹、山北輝裕、谷村要、打越正行、白石壮一郎、川端浩平)
PDF
2,869KB
* 記録 *
大学院生・研究員による研究活動(2009年7月~2009年12月) PDF
514KB


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posted on 2010-02-03    

年末年始の大学院GP事務室の閉室について

年末年始の以下の期間中、大学院GP事務室はクローズします。

2009年12月24日(木)午後 ~ 2010年1月5日(火)

よろしくお願いします。

posted on 2009-12-24    

【ギャラリー】建物の記憶

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建物の記憶(2009年8月撮影、2009年12月掲載)

北京市郊外にある798芸術区において、七月から八月にかけて798北京ビエンナーレが開催されていた。798芸術区は元軍需工場地帯であり、中国における現代アートの集積地として国際的にも認知されつつある場所である。ドイツのバウハウスの流れを組む工場建築が立ち並びその多くがギャラリーやアトリエやショップに改装されている。

工場建築は高い天井や広い空間を有するため、芸術家のためのアトリエや展示スペースとしては最適である。ゆえに多くの芸術家がここに制作の拠点を構えるために集まってきた。バウハウスは1919年にドイツに成立した「学校」である。20世紀のモダニズム建築を牽引していく建築家、ヴァルター・グロピウスやミース・ファン・デル・ローエなどが校長を務めたことに象徴されるように、そこでは機能主義や合理主義と美との融合が追求された。

写真の建物は円弧上の屋根とそれを支える柱、そして大きくとられたトップライトが合理的で機能的な空間美を演出している。この空間で特筆すべきは天井に赤色のペンキで大きく描かれた「毛主席万歳」のスローガンである。同じようなスローガンを他の建物でも見ることができた。このスローガンを消さずに残しているところが戦略的である。

日本でも「リノベーション」という言葉を目にする機会が多くなってきた。リノベーションとは、使われなくなった建物の用途を変更するために改装し、新しく生まれ変わらせる試みである。滋賀県長浜の黒壁など古い街並みを有する街ではよく行われている。リノベーションの際、重要になるのは改装時に「建物の記憶」を残しておくことである。日本家屋では巨大な大黒柱や、大きく湾曲した太鼓梁を残すことによって往時をしのばせるきっかけとしている。ほんの一部でも建物の記憶を残すことにより、その建物に蓄積された記憶の重層性を表象できるのである。

撮影・文:松村淳(博士課程前期課程)

■ストリート・ギャラリー(フィールドから見えるもの)

posted on 2009-12-08