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【ギャラリー】地方都市=ジモトの駅前の風景

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地方都市=ジモトの駅前の風景(2010年4月24日撮影、2010年7月掲載)

JR岡山駅の東口の風景は他のターミナル駅前のそれとほとんど変わらないだろう。もちろんすべてが同じなわけでもない。背中を向けた桃太郎像とその愉快な仲間たちは、岡山の地域アイデンティティの象徴として位置づけられている。この写真には映っていないが、駅前の目抜き通りは桃太郎大通りと呼ばれている。他にも桃太郎アリーナや桃太郎スタジアムもある。しかしそのような岡山を象徴する記号を除けば、これがどこの風景なのかということは、生活者や旅行で訪れたことがある人以外には特別な意味を持たないだろう。

この地方都市のターミナル駅はこれまでたくさんの人たちに利用されてきた。数知れない人びとの記憶や経験がこの風景とつながっている。私自身も国内外を旅するときには必ず利用してきたし、高校生の頃には恰好の待ち合わせ場所だった。携帯電話が普及していない20年前の高校生時代。待ち合わせをしたが現れない友人を1時間以上待っていたということもあった。そんな彼も今では家具職人となり、僕の西宮のアパートにある木製テーブルをつくってくれた。というように、ローカルなジモトをめぐる記憶は、次々と様々な思い出を想起させ、過去・現在・未来のイメージを豊饒なものとしてくれる。

しかし、ジモトを代表する桃太郎と僕とはほぼ無関係である。僕のジモトのイメージに対しては何のインスピレーションも与えない。むしろ、ここに桃太郎がいるからこそ、思い出せないことがあるのではとさえ考えてしまう。試しに左手の人差し指で桃太郎を隠してみた。なんか色々と思い出してきたぞ、少なくともそういう気分にはなる。自分で考えてみようという気になるのだ。ジモトについて自分たちの言葉で語ってみること。そうすれば、地方都市の駅前の雲に覆われた空も晴れるのかもしれない。

文:川端浩平 (大学院GP特任助教) 撮影:中村智道

■ストリート・ギャラリー(フィールドから見えるもの)

posted on 2010-07-01