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【ギャラリー】ネパール・幸福祈願のモノたち

20081015


ネパール・幸福祈願のモノたち(2008年10月15日撮影、2010年9月掲載)

11万5千本の灯りをともし、家族の健康と幸福を祈願するソウラックバッティ。ネパールの首都カトマンズ近郊の町、キルティプールで目にした祈祷である。この際、多くのお供え物を準備する。祈祷を行う寺院の横には、お供え物を調理する台所まであり、家族総出で、朝早くから準備に取りかかる。

写真は1回分の祈祷のために準備されたモノである。手前にあるのは火をともす芯、これはひとつひとつ綿を手で縒って作られている。竹かごのなかには、ジャガイモ、青菜、水牛の肉、ゆで卵、大豆、小麦粉を油で揚げたプーリー、果物などが、沙羅双樹の葉でできた皿(タパリ)に盛られている。これだけ多くのモノが神に供えられるのである。タパリは、かつては各家で作っていたが、いまではカトマンズのマーケットで100枚50円ほどで売られており、ほとんどの家では購入するようになったようだ。

数時間をかけて準備された供物は、儀礼を取り仕切る一家の母親の手からほんの一瞬神に供えられたのち、周りに集まってくる近所の子どもたちによって奪い合いとなる。神への「お供え物」はあっという間に他者の「食物」となり、子どもたちの空腹を満たすのである。

祈祷のあとは、近郊から集まった家族が一列に並んでゴザに座り、宴会となる。自家製の酒「ロキシー」を飲み、ごちそうを食べ、談笑する。カトマンズ盆地では核家族が増えてきたが、こうした祈祷や祭りの際には親族が集まってくる。家族の幸福を祈願する日は、普段会えない人々の健康を確認できる日でもあるようだ。

文:葛西映吏子 (大学院GPリサーチ・アシスタント)

■ストリート・ギャラリー(フィールドから見えるもの)

posted on 2010-09-29