コンセプト
リーダーあいさつ
関西学院大学社会学部社会学研究科教授 高坂健次
  • プログラムの背景
     本プログラムに思い至った背景と、私たちが本プログラムに込める期待は次のとおりです。
     第一に、最近の大学院生には留学生や社会人入学生が増えており、その帰結として、これまでに社会学という学問の基礎を必ずしも十分に身に付けていない学生が少なくない。こうした人々には、大学院の早い段階でみっちりと基礎を学習してもらいたい。
     第二に、学問の革新のためには、社会学とは異なる領域でこれまで勉強してきた人で、大学院では社会学の領域から社会現象の解明をめざす人たちの入学を歓迎したい。そうした人にも基礎は必須です。
     第三に、実践へのセンス(感覚)を磨いてもらいたい。大学院で学ぶときに必要なのは、専門性に埋没することではありません。専門的知識が実践に役立ってこそ、学問には大きな意味がある。そう私たちは考えています。そのためには、知識を実践に活かす手立てをしっかりと身につけてほしい。
  • ソシオリテラシー
     この言葉は私たちの造語ですが、「現実社会の諸問題を的確に把握し、実践的に関わっていく上で必要不可欠な社会学的な知識/技能」を指すものとして使っています。つまり、ソシオリテラシーの涵養によって、社会の諸問題に鋭く切り込んでいける人材育成を、本プログラムはめざしています。
  • ソーシャルリサーチ
     「社会調査=ソーシャルリサーチ」教育の実現に向けて私たちは、「フィールド/メソッド系」、「リサーチ/データ/プレゼンテーション系」、「セオリー/モデル系」の三つの柱を立てました。大学院生は自分自身の専門としていずれかの「系」に特化して研究を進めますが、博士前期課程では3つの系すべてに習熟してもらうことにしています。
  • さまざまなプログラム
     博士前期課程の段階から、さまざまなプログラムに接してもらいます。実践的知の涵養のためには他大学院生との共同調査や合同調査実習への参加を、国際発信能力の涵養のためには国際ワークショップ、英語チュータークラス、英語コロキアム、サマーセミナー、海外留学、海外調査プログラムなどをオプション・プログラムとして用意しています。
  • 多様な進路
     従来からの研究者養成のみならず、ソシオリテラシーを生かして種々の職業(NPOやシンクタンク、放送、新聞、出版社など)に進む道もキャリアパスとして考えられています。これまでに企業の研究員や在外日本大使館専門調査員として就職した卒業生もいます。
  • 社会の幸福
     大学院生には、ソーシャルリサーチに携わるとき「調査のための調査」ではなく「社会の幸福に資する調査」を常に念頭においてもらいたい。現在、社会学部卒業生を対象とした質的・量的調査を企画しています。それによって、キャリアパスやライフイベントの分析を通して「生きづらさ」に満ち満ちた現代日本社会における「幸福の条件」を探るための方途を提示したいと思っています。