【レポート】第6回研究会「場の創発・衝突・奪還」研究会
2009年7月25日(土)13:00-17:00
主催 * 研究班「東アジアのストリートの現在」
論者:
○ 猪瀬浩平さん(明治学院大学専任講師)
○ 前田拓也さん(神戸学院大学講師)
○ 丸山里美さん(日本学術振興会特別研究員、東洋大学)
コメンテーター:
○ 福井栄二郎さん(島根大学准教授)
各人の報告内容は以下の通りである。
猪瀬さんの報告:
単に場所に人が集まっていることが場の創発・奪還なのではなく、必然性もなく集まった場において、人と場の結びつきや、場をめぐる人と人の結びつきが如何にして生成するのか、という根源的な問題関心のもと、場に固有名が与えられる瞬間(場に名をつける、場をなつかしむ)に注目された。
福祉農園における盗難被害を契機に、農園の場の位置づけが顕在化する。とくに、盗難をめぐる人びとの対応によって、即時的に福祉農園の内と外が分けられていく。盗難事件という危機を契機に、福祉農園のメディアとしての「場所」性が重要な意味をもつことが指摘される。いっぽう、内側は一枚岩ではなく雑多であり、この雑多性が、新たな日常活動を生成する起源とされる。これらをもって、盗難を契機とした共同体(性)の可視可の<リズム>が報告された。
前田さんの報告:
障害をもつ当事者と介助者の関係性の変容を社会学的に明らかにされた。その際、介助をめぐるコミュニケーションがとりかわされる「場」という分脈を視野に入れるために、CIL(自立生活センター)と個々の介助者との関係性に着目された。とくに、CILを「出入り自在」で非同質的な流動性をもつコミュニティとして位置づけるなかで、介助の有償化に着目される。それは、「つながると同時に切り離された人びと」の集う両義性の場であるが、それこそが重要であると指摘された。なぜなら、それが介助者/健常者を含めたさまざまな人びとが織りなす社会的実践を可能にするのであり、そうした逡巡を経た<介助者>が社会へ輩出されることこそ、CILという場の社会への拡散を意味し、「運動」としての可能性があるからである。
丸山さんの報告:
イギリスのスクウォット運動について報告された。イギリスではスクウォットは違法ではない。かといって、合法でもなく、違法ぎりぎりのところでおこなわれる。刑事ではなく民事であつかわれる。いったん住居(空き屋)に侵入すれば、居住権が発生するため、居座ることができる。裁判所に所有権を訴えない限り、スクウォッターを立ち退かせることはできないが、訴えられると確実に立ち退かされる。有志によって自主管理され、アートやイベント、交流スペースとして用いられるソーシャルセンターという空間の実践・スクウォットの実践・思想が報告された。
報告者:山北輝裕(大学院GPリサーチアシスタント)